Ziggy
Zack

彼女の生まれ故郷は、薄暗い闇と目障りなネオンに包まれた町だ。
日々はチンピラや悪党の跋扈する中で過ぎ、暴力と欺瞞だけが唯一治安といえるものであった。

しかしそんな町にも、周囲とは一線を画す、栄光に包まれた一族がいた。
町の再生事業や治安向上のためのヒーロー派遣事業に力を入れ、英雄のように謳われる男。

そんな男を献身的に支え、貧しい人々に寄り添い、聖母のように讃えられる妻。

そして、その2人から生まれ、荒れた町の希望の象徴とも囁かれる娘。

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娘は幼い頃から、両親に、周囲に、常に完璧を求められ、その枠組みに自らを収めてきた。

だが成長するにつれ、彼女はそんな栄光の一族が持つ"影"に気づき始める。

裏社会との関係、隠された差別的な思想、賄賂に群がる人々と、金儲けのために切り捨てられる人々……。

彼女は自らの心にも手を伸ばそうとしてくる【影】を恐れ、ついには家を飛び出した。

それまでの世界を捨てて生きることを決意した彼女は、自らの価値を信じ新たな道を歩み始める。

彼女の逃避行は容易なものではなかった。
​荒れ狂う街の中では、栄光の鎧を脱ぎ去った少女のなんと無力なことか。
孤独な彼女は追手から逃げ惑い、街に潜むあらゆる暴力に耐える日々を送った。
 

その日も彼女は町のチンピラに囲まれ、傷の痛みにうめいていた。
しかしそんな時、彼女は端末の画面に表示された一通のメッセージに出会う。
「あなたは選ばれました」
誰かに見られているかのように、完璧なタイミング。
スパムとしか思えないそのメッセージに、彼女は縋った。
 

その瞬間、彼女の人生は永遠に変わった。
まるで稲妻が身を貫くように、エネルギーが彼女の体を包み込み、変容させた。
肌の色は雷によって焦がされたかのように暗く沈み、代わりに溢れ出る光が体の至る所から噴出した。
彼女は電気を操る能力を得たのだ。

「決めたぜ。私はこの力で、このクソッタレな世界を手にいれる！

そのためにはまず……配下を集めなきゃいけねえな」
 

そうして、彼女は本来の名前を捨てて、新たな名前を名乗ることとなる。

​稲妻を操り【影】を破壊するヴィラン、「ジギー・ザック」と。

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